前置き
今まで他人が書いたバトルタワー攻略は、適当に「エメラルド バトルタワー 攻略」などで検索して出てきたものしか参考にしておらず、今時エメラルドのバトルタワーの考察をしているプレイヤーが全然いないこともあって既存のものはほぼ全て調べ尽くし、試していないポケモンがまだまだ数多くいるとはいえ僅かながら攻略パーティの発展にも上限を感じていた。
そこで、ふと「海外のバトルタワーの記録はどんなものだろう」と思ってなんとなく調べてみたところ、2303連勝という何か凄まじすぎてよく分からない記録が出てきた。
すぐさまこのパーティの考案者であるAdedede氏にDMを送り、その4の324連勝がプテラ採用パーティの世界記録であったことが判明したり、しゃわさんのエアームドが絶賛されたり、いちゃもんハガネールをめっちゃ勧められたり、このブログの記事軒並み翻訳しにくすぎるからどうにかしろと言われたりと、キャッキャウフフとそのまま何通かDMでやりとりをしていたところ、このパーティの詳細と当ブログへの掲載許可をいただけたので紹介させていただきます。
エアームドハピナスラティオス(2303連勝)
種族値:65-80-140-40-70-70(465)
努力値:H252 B140 D116
実数値:172-76-195-×-105-90 (A個体値0)
性格:ずぶとい
技:まもる/ねむる/ふきとばし/いちゃもん
持ち物:カゴのみ
備考:
・C140ナマズンの波乗り2耐え
・C200エーフィのサイコキネシス3耐え
・A無振りビルド1積みカイリキーのクロスチョップを2耐え等
対物理&一撃必殺。
攻撃技全切り補助要員その1。いちゃもんで敵を縛りつつ、まもるねむるでPPを削るのが仕事。剣舞持ちなどの受け切るのが辛そうな相手は型を見極めてから吹き飛ばしたりいちゃもんをかけたりすることで無力化する。特殊耐久を最低限に抑え物理耐久にガッツリ振っているため多少の急所ではビクともしない。
無振り70族とは同速勝負になってしまうが、後ろに控えるハピナスが無振り85族まで抜いているので問題ないとのこと。
・ハピナス
種族値:255-10-10-75-135-55(540)
努力値:H52 B252 D28 S172
実数値:337-13-62-×-159-106 (A個体値0)
性格:臆病
技:まもる/みがわり/タマゴうみ/なきごえ
持ち物:残飯
備考:
・B全振り
・H4nを避けつつ残りHD
攻撃全切り補助要員その2。
まさかの残飯まもみがハピナス。まもみが自体は何度か使用したことがあるが、今までプテラやサンダーなどのプレッシャーキャラの特権だと思い込んでいたのでこの型を初めて見たときは度肝を抜かれた。
なきごえを採用することで、物理が相手でも無理やり受けに行くことが可能。敵のPP削りに役立つほか、敵をわるあがきまで追い込んだ後のラティのめいそうの補助も兼ねている。
また、なきごえのPPが最大で64もある関係で敵とのPP合戦に負けることは絶対に無いんだそうな。
種族値:80-90-80-130-110-110(600)
努力値:H172 B108 C4 D4 S220
実数値:177-85-114-151-131-173 (A個体値0)
性格:臆病
技:ドラゴンクロー/めいそう/みがわり/じこさいせい
持ち物:ラムのみ
備考:
・無補正全振り120族抜き
・HP4n+1
・C+6等倍ドラゴンクローでハピナスとレジスチル以外は全て確定2発以内
・同上ドラゴンクローでHD170振りレジスチルを残飯込みで確定3発
このパーティ唯一の攻撃要員。
必要最低限までSを伸ばして残りで耐久ぶっぱしたラティオス。みがわり+じこさいせい+ラムで事故対策も抜かりない。
3匹の中ではまあ比較的普通の型。ドラゴンクローワンウエポンというのは(ラティオスとしては)珍しいようにも思うが、何分他2匹のインパクトが強すぎて目立たない。
解説
現在のバトルタワー連勝世界記録、2303連勝を記録したパーティ。
一言で言えば「裏の積みエースを通す」がコンセプト。実はこのコンセプト自体はこのブログのパーティその2や、パーティその7と全く同じだったりする。
しかしこのパーティ、コンセプトを通すことにかける熱量が上2つのパーティのそれとはダン違いなのである。パーティに搭載されている攻撃技がラティオスのドラゴンクローのみで、ドラゴンクロー以外の要素全てでラティオスを通すうえでの事故や負け筋を潰すことに尽力している。
役割をポケモンごとにしっかりと分けることで、対応範囲を無理に広げてしまったがために逆にどっちつかずになることを防ぎ、勝利までの道のりを完璧にフローチャート化することに成功している。
ここで、このパーティのポイントを3つ挙げる。
・その1:いちゃもん
恐らくこのパーティで最も重要であると思われる技。
敵はこちらに最大打点で通る技を優先して使ってくるため、眠るやまもるといった技と併用することで本来受けられない火力ラインを無理やり受けに行くことが可能になる。後ろの積みエース展開の準備を無理なく行うことが出来るようになるため、補助としてはこれ以上ない技だと言える。
実はいちゃもんについては当ブログのコメントで一度言及されている。
剣舞持ちのアーマルドの処理が非常に難しいという相談で、僕はこの相談に対してパーティに採用されていたサマヨールの技(いちゃもん,眠る,めいそう,冷凍ビーム)のうち、めいそうと冷凍ビームを鬼火とまもるに変更することを勧めている。
で、当時の僕のいちゃもんへの見解がコレ。
いちゃもんについてなんですが、使ったことがないので推測になりますが、鈍い以外の火力アップ系の積み技持ちには打たないほうが良いと思います。無駄に積ませてしまって本来ならギリギリ受けられるところが狂うような事故が起こりそう。
アーマルドに対しても、いちゃもんは打たずに鬼火だけ入れて雪崩を枯らすことに集中したほうが多分勝てます。分身持ちやフルアタの敵に対してはかなり有効だと思うのでガンガン使っていって良さそうです。
いちゃもんの効果は「同じ技を続けて出せないようにする」というもの。(永続)
上記のアーマルドとサマヨールの例で言えば、アーマルドにさっさといちゃもんをかけることで連続で受けるのが辛いいわなだれを1発置きにしか打ってこない状態にし、まもると合わせていわなだれを一度も受けることなく戦闘を進められるようになる。
よって、アーマルドを見たら最優先でいちゃもんを打つのが正解。何気に鉢巻アーマルド対策も同時に行える。
これで当時の僕のいちゃもんの考察がいかに的外れだったかを理解していただけたかと思う。
簡単に言うと、いちゃもんは敵をケッキングにする技。まもると組み合わせることで絶大なシナジーを産みだす。PP削りや基点作りには欠かせない技だと言えるだろう。
・その2:なきごえ
いちゃもんはともかく、この技の採用は今まで一度も考えたことがなかった。いかくや甘えるなどと比較するとどうしても弱いからとかではなく、この技の存在を完全に忘れていたからとかそういうレベル。
改めて考察してみると、あまえるやフェザーダンスほどの効果は得られないものの、パーティその4で書いた「サマヨールで鬼火を入れることによってハピナスの身代わりが敵の物理技を耐えるようになる」をハピナス単体で出来るようになるのはどう考えても強いし鬼火と違って根性にも効くしわるあがきの威力も下がるしで、弱い要素がどこにも見当たらないのであった。
この技の最大の利点は、後ろの積みエースにあまえるラティアスを採用せずに済むことかもしれない。毎度めいそうを最大まで積むとはいえ対鋼の火力はラティオスでようやくギリギリで、特にレジスチルは急所に頼らなければラティアスでは押しきることができない。
ここの役割をきっちり分けることで、事故や無駄な詰みを極力減らすことに成功しているのである。
・その3:先発エアームド
コロンブスの卵。元々プレッシャー持ちを初手に出して起点を作る戦法を好んで使っていたこともあるが、このパーティを見るまでは思いつきもしなかったことである。
初手エアームドから、剣舞持ちの敵はふきとばし、物理一本の敵はいちゃもんしてPPを削り、特殊一本の敵が出てきたらハピナスに引く。どんな敵が相手でもとりあえずまもみがから入るプレッシャーとは違い、対物理と対特殊の対応がしっかりしているおかげで敵に合わせた非常に柔軟な対応が可能。考えてみれば当たり前も当たり前、普通に強すぎる並び。
ただし、だったら毒守エアと毒投げハピで同じことをやってもここまで強いかというとそれはまた別のお話。(いやまあそれでも強いとは思うけど)
これは技を4つ全て補助技で固めた2匹でやるから強いのであって、普通の汎用型でやっても恐らく受けきれずにどこかで事故る。エアハピの技が1つでも欠けたらたちまち成り立たなくなってしまうだろう。
『倒されない』に全振りしたポケモンが如何に固いかをよく分からせてくれる事例である。
個別敵攻略
ガラガラとハッサムは初手ふきとばし。それ以外は初手で守って様子を見るのを前提とする。
両刀炎タイプその1。
S80とそれなりに速く、エアームドとハピナスそれぞれに一致で弱点を突いてくる強敵...と思いきや、S振り個体がオバヒ地震こらきしの1体しか存在せず、残りの個体は全てS無振りであるため対処は難しくない。ラティオスに対して効果的な技をほとんど持っていないため、ハピナスでなきごえを数発入れるだけで十分起点に出来るだろう。
両刀炎タイプその2。
かわらわりと火炎放射を両立している個体がいるが、Aに下降補正がかかっているうえに努力値無振りなのでハピナスで余裕で起点に出来る。
・ブーバー
両刀炎タイプその3。
火炎放射を持っている個体は全て格闘技も覚えており、瓦割り、クロスチョップと両立している個体がそれぞれ1体ずつ存在している。
どちらの個体もラティオスに対して有効打を持たないため、エアームドで守って火炎放射を確認したあとにいちゃもんを入れ、ハピナスでなきごえを入れられるだけ入れてそのままラティオスに繋ぐ。
火炎放射とかわらわりを両立している個体が1体存在するが、A下降補正でA無振りなのでハピナスで起点にできる。
竜舞持ちはふきとばす。
・こだわり鉢巻を持っている可能性のある敵(アーマルド、リングマ、グランブル、プテラ)
初手でエアームドで守り、いちゃもんを入れることで持ち物を特定。鉢巻持ちであることが分かったらエアームドでPPを削って悪あがきにまで追い込み、ハピナスでなきごえを入れてラティオスへ。
対アーマルドは初手で守ってみて素直に殴ってくるようなら鉢巻持ちと見ていい。
ふきとばす。
・分身持ちの敵(多数)
ふきとばす。
瞑想を確認次第ふきとばす。瞑想フーディンはサイコキネシスワンウエポンなのでいちゃもんさえ入れれば守ると合わせて完全に起点にできる。
・瞑想持ち3犬
スイクンはツーウエポンで面倒なのでふきとばしでいい。
エンテイとライコウは特殊95技ワンウエポンだがエアームドでいちゃもんを入れられないためハピナスで全てPPを削る必要がある。プレッシャーが無くとも残飯まもみがだけで少なくとも17ターン稼ぐことができるため頑張って削り切ろう。
まとめ
役割をしっかり分けることが如何に重要か、ということをはっきり示しているお手本のようなパーティである。
僕自身、本人から説明を受けつつ自分でも考察する中でタワー攻略への考え方を多少変えることが出来たので、これをこれからのパーティ作りにも生かしていきたいと思う。
ちなみにこのパーティの製作者Adedede氏、2303連勝(329周)を達成した段階でバトルタワーへの挑戦を中止している。いい機会なのでこの大記録を塗り替えたいと言う人は是非参考にしてチャレンジしてください。
*2020-11-28 追記
本人がまた攻略を再開し、記録が2415連勝まで伸びたとのこと。2500連勝を狙う際に配信を予定しているそうなので、興味がある人はぜひ見に行こう。
当記事を書くに当たって、世界的に巨大なポケモン対戦サイトとして知られているSmogonからデータをいくつか引用させていただいた。Smogonには今回紹介したパーティの他、レジスチル入り1664連勝パーティやマッスグマ入り657連勝パーティなど興味深いパーティが紹介されており、現在もバトルタワーガチ勢の間で考察が勧められている。気になる方は是非一度覗いてみてほしい。
ではこの辺りで。